■ノミネート理由・活動概要
国際バカロレア(IB)のコア科目である「TOK(Theory of Knowledge) 知の理論」を、IB学習者以外の生徒も学べるようにわかりやすく読みかえ、「知の道筋」として授業で実践してきました。具体的には、TOK授業における「知るための方法」「知識の領域」の学習をベースにしつつ、「知とはなにか?」「さまざまな知の獲得」「既にある知識を批判的に捉え直し、新たにこの世界を創造し直すための知識とする方法」「現象の奥底に潜む問題の本質を見いだす方法」として伝えながら、「人はどうやってそれを知ることができるのか?」「手にした知識は真に正しいのか?」「知識を生かすとはどういうことか?」「表層に浮かぶ疑問の奥底にどんな本質的な問題があるのか?」等々について実例に当たりつつ考えていきます。生徒には2000字のエッセイから始まり4000字、最終的には6000字~8000字の論文を課しており、さらに中間プレゼンテーション、最終プレゼンテーションの場で広く伝えることを求めています。そのほか、IB校でのTOK授業の実践経験がある方との共同授業、また公開授業や情報交換会などを通して、批判的思考力を高める授業の浸透に努めてきました。生徒の批判的思考力の高まり、長大な論文課題に集中する力の獲得、「表層に浮かぶ、一見関連性のないように見える疑問と疑問との間に人類が考えなければならない本質的な問題」を見いだす力等々が確実に生徒に根付きつつあります。
■総長からの選定理由コメント
批判的思考力を育てる実践であり、エッセイやプレゼンテーションを通して「知識とは何か」「知る過程とはどのようなものか」を探求していることが、まことに「実践知」にふさわしい。受講生徒が「美しいと感じるもの」をお互いに持ち寄り、相互にプレゼンテーションしながら、普遍的な芸術的価値について考える授業が印象深い。生徒が議論し思考する。それが本学にとってもっとも大切な時間なのである。その時間と場が生み出す力によって、世界のどこでも生き抜くことができるようになるだろう。本学全体に広げたい取り組みである。
■受賞の感想
「世界のどこでも生き抜く力賞」受賞にあたって
国際理解「知の道筋」
法政大学国際高校 波多野 仁