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【2018年度自由を生き抜く実践知大賞】世界のどこでも生き抜く力賞 国際理解「知の道筋」 紹介

  • 2019年3月4日 掲載
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■ノミネート理由・活動概要

国際バカロレア(IB)のコア科目である「TOK(Theory of Knowledge) 知の理論」を、IB学習者以外の生徒も学べるようにわかりやすく読みかえ、「知の道筋」として授業で実践してきました。具体的には、TOK授業における「知るための方法」「知識の領域」の学習をベースにしつつ、「知とはなにか?」「さまざまな知の獲得」「既にある知識を批判的に捉え直し、新たにこの世界を創造し直すための知識とする方法」「現象の奥底に潜む問題の本質を見いだす方法」として伝えながら、「人はどうやってそれを知ることができるのか?」「手にした知識は真に正しいのか?」「知識を生かすとはどういうことか?」「表層に浮かぶ疑問の奥底にどんな本質的な問題があるのか?」等々について実例に当たりつつ考えていきます。生徒には2000字のエッセイから始まり4000字、最終的には6000字~8000字の論文を課しており、さらに中間プレゼンテーション、最終プレゼンテーションの場で広く伝えることを求めています。そのほか、IB校でのTOK授業の実践経験がある方との共同授業、また公開授業や情報交換会などを通して、批判的思考力を高める授業の浸透に努めてきました。生徒の批判的思考力の高まり、長大な論文課題に集中する力の獲得、「表層に浮かぶ、一見関連性のないように見える疑問と疑問との間に人類が考えなければならない本質的な問題」を見いだす力等々が確実に生徒に根付きつつあります。

■総長からの選定理由コメント

批判的思考力を育てる実践であり、エッセイやプレゼンテーションを通して「知識とは何か」「知る過程とはどのようなものか」を探求していることが、まことに「実践知」にふさわしい。受講生徒が「美しいと感じるもの」をお互いに持ち寄り、相互にプレゼンテーションしながら、普遍的な芸術的価値について考える授業が印象深い。生徒が議論し思考する。それが本学にとってもっとも大切な時間なのである。その時間と場が生み出す力によって、世界のどこでも生き抜くことができるようになるだろう。本学全体に広げたい取り組みである。

■受賞の感想

「世界のどこでも生き抜く力賞」受賞にあたって
国際理解「知の道筋」

付属高の小さな授業実践に高い評価をいただき、正直驚いています。
「知の道筋」はIBのコア科目である「TOK(Theory of Knowledge)」をIB学習者でなくとも学んでいけるよう、読み替え、組み替えたものです。人はどうやってそれを知るのか、すでにある知識はどこまで正しいと言えるのか、顕在する現象・課題の奥底にどんな本質的な問題が隠れているのか「知の道筋」は問い続けます。仮に到達点があっても、それは現時点での着地点でしかなく、学習者は手にした「知識」をさらに点検し、次の問題をえぐり出していこうとする批判的で永続的な視線と精神が求められます。「TOK」の理論で私が特に優れていると捉えているのは「借り物では済ませない」ための方法が確立されている点です。「知の道筋」でもこれを積極的に説きます。学習者はみずからの「言語、知覚、理性、感情、直感、記憶、想像、信仰」を動員して、徹底的に問題に対峙しなければならず、社会が共有する知識をつなぎ合わせただけの(たとえ批判的に点検した上であっても)ものは「解」として認められません。混迷する社会が抱える、停滞したままの課題・問題に突破口を見いだすとしたら、それは既成の知識とは別のところにあるはずでしょうから。


法政大学国際高校 波多野 仁

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